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今がその時かも?就職、退職等に伴う公的年金・健康保険制度の手続について

  • 執筆者の写真: 山田功
    山田功
  • 5月8日
  • 読了時間: 8分

更新日:7 日前

新年度を迎えて1ヵ月が過ぎました。新社会人になった人、定年を迎えてそのまま再雇用された人など年度の切り替えを契機として、新たなスタートを始めた方もいると思います。今回の記事では、新生活をスタートした人や一定の年齢を迎えた人に向けの必要な手続(公的年金・健康保険制度)について、概要を解説します。これからの解説の理解を容易にするため、下記の表をご覧ください。


年金制度と(国民)健康保険制度はセット

年金制度と健康保険制度の加入(被保険者)は、原則として上記の組合せになっています。20歳以上の自営業、無職、学生等は、国民年金1号被保険者で国民健康保険の被保険者(黄色)、民間会社にお勤めの方は国民年金2号被保険者で厚生年金の第1号で協会けんぽ(全国健康保険協会)(緑)、扶養されている配偶者の方はその配偶者の健康保険の被保険者(ベージュ)となります。 例外として、20歳以上の学生など親(民間会社に勤務)の扶養に入っている場合です。この場合、その方は国民年金の第1号被保険者(黄色)ですが、医療保険は健康保険法の被保険者(被扶養者)として親(扶養者)の協会けんぽ等(緑)の被保険者となります。この表の組合せを念頭におき、必要に応じ参照するなどして、記事をお読みください。以下では、煩雑さを避けるため「第1号被保険者」、「第2号被保険者」又は「第3号被保険者」との記載はすべて国民年金の被保険者を指します。

1 20歳になったとき


学生、パート・アルバイトなどの短時間労働者や無職の方は、第1号被保険者(黄色)となります。大学生で、親の扶養に入っている人(被扶養者)でも法律上、強制加入ですので被保険者となります。20歳到達後、おおむね2週間程度で日本年金機構から「お知らせ」が届きますので、所定の手続を行うこととなります。大学生・専門学校在学中の人は「学生納付特例制度」の申請をすることが多いと思います。 大切なのは、仮に保険料を支払う経済的余裕がない場合でも、必ず手続を行うことです。必要な手続を行わないと、年金受給の権利を取得できなくなります。保険料納付猶予、学生納付特例、保険料申請免除等の制度を利用できれば、受給権の要件の一部になります。現行制度において、老齢基礎年金の受給資格を得るためには、10年の保険料納付済期間、保険料免除期間等(「受給資格」といいます。)が必要です。必要な手続をして、保険料免除期間が10年に到達すれば、金額的にゼロ円ですが受給権は発生します。また、保険料(申請・法定)免除、納付猶予の手続をしていれば、不運にも交通事故等に遭遇し重い障害が残ってしまった場合、要件を満たせば障害年金が受給できます。障害基礎年金は、たとえ全期間が保険料免除期間であっても他の要件を満たした場合、満額(障害等級2級:令和7年度の額831,700円(昭和31年4月2日生以後の方))の年金が支給されます。

2 就職した場合

専門学校・大学等を卒業して就職(民間企業)した場合(卒業時に20歳以上)、第1号被保険者(黄色)から第2号被保険者(緑)となります。このように既に第1号国民年金被保険者である人が第2号又は第3号被保険者になるなど、被保険者間での変更手続を「種別の変更」(国民年金法11条の2)(注)といいます。※注:届書の様式やマイナポータル上では、「資格取得」「種別変更」など用語が統一されていないようですので、記入上の注意書きを参照してください。以下この記事では「種別の変更」と記載します)。この手続は、勤務先(就職先の総務・人事部門)経由で行います。

健康保険・厚生年金被保険者資格取得届 親の扶養に入っていた場合は「年金制度と健康保険制度はセット」の例外に該当し、健康保険の部分は親の健康保険制度(黄色:協会けんぽ等)の被保険者(被扶養者)となっているので、親の勤務先を経由した手続により扶養から外れることになります。 健康保険(被扶養者)・国民年金第3号被保険者関係届(非該当)

3 退職して無職となったとき

第2号被保険者(緑)から第1号被保険者(黄色)への種別の変更に該当します。親・配偶者等の被扶養者にならない場合は、厚生年金被保険者の資格喪失を勤務先経由で行うとともに、退職の日の翌日から14日以内に、自ら居住する市(区)町村長で第2号被保険者(緑)から第1号被保険者(黄色)への「種別の変更」の手続を行います。 健康保険・厚生年金保険資格喪失届国民年金被保険者関係届書(申出書)

4 婚姻等により配偶者の被扶養者となる場合

第1号被保険者(20歳以上の無職、短時間・パート勤務の人(黄色))や第2号被保険者(緑)が、第3号被保険者(ベージュ)になるパターンです。配偶者の勤務先経由で手続をします。 被扶養者(異動)届・第3号被保険者関係届 親の扶養に入っている場合は、上記2で説明したように親の勤務先を経由して扶養から外れることになります。 健康保険(被扶養者)・国民年金第3号被保険者関係届(非該当) 婚姻を契機に勤務先を退職する場合は、第2号被保険者(緑)から第3号被保険者(ベージュ)への種別の変更に該当します。勤務先経由で「健康保険・厚生年金保険資格喪失届」の手続も必要です。

5 離婚・収入超過・就職等により配偶者の被扶養者からはずれる場合

配偶者の勤務先経由で上記4の様式で「健康保険(被扶養者)・国民年金第3号被保険者関係届(非該当)」の手続が必要です。加えて、以下の手続が必要です。 (1)第1号被保険者(黄色)への種別の変更離婚後、短時間勤務やパートとして働く場合や無職の場合です。住所地の市(区)町村へ下記の様式で14日以内に届け出て下さい。   国民年金被保険者関係届書(申出書) (2)第2号被保険(緑)への種別の変更(正社員等として勤務する場合)上記「2 就職した場合」と同様、事業主経由での手続が必要です。

6 特別支給の老齢年金を受給している人が65歳となったとき

従来まで60歳で定年を迎える企業が多かったのですが、最近では60歳で役職を定年し、継続して65歳まで雇用する企業が増加しています。 次の例で具体的に見てみましょう。

本人:A男さん    生年月日等:1960年(昭和35年)3月25日生   退職日:2025年(令和 7年)3月31日   在職中は第2号被保険者(緑)で退職後は無職の予定  64歳(令和6年4月)から特別支給の老齢年金を受給中  配偶者:B子さん   生年月日等:1967年(昭和42年)12月19日   無職、A男の被扶養配偶者(第3号被保険者(ベージュ))

まず、本人は既に特別支給の老齢年金を受給中ですので、日本年金機構からハガキ形式の65歳からの老齢年金の裁定請求書が送付されます。65歳の誕生月の初め頃(A男さんの場合は3月上旬)に日本年金機構から送付されてきますので、繰下げせずに65歳から受給する場合は、必要事項を記入の上、切手を貼って日本年金機構へ返送します。

厚生年金保険 老齢給付年金請求書  A男さんの健康保険(緑)は、退職後は在職中の協会けんぽ等の任意継続被保険者(※)となるか、国民健康保険の被保険者(黄色)のいずれかを選択します。A男さんの場合、年金関係は退職後は無職で60歳以上(65歳)ですので第1号被保険者(黄色)には該当せず、いずれの制度の被保険者にもなりません

※任意継続被保険者:協会けんぽにおいては、一定の要件を満たした被保険者の場合、退職後最大2年間は被保険者となることができます。この場合の保険料は、退職時の標準報酬月額か、協会けんぽ被保険者の平均標準報酬月額(令和7年度の上限は32万円)のいずれか少ない額を基礎に毎月の保険料が算出されます。

国民健康保険の場合

①前年の所得を基礎として国民健康保険料(税)が算出されること②妻などの扶養親族についても被扶養(配偶)者という考えはなく、被保険者として国民健康保険料(税)の算出の基礎となることなど、一般的に退職後最初の1年間は、任意継続被保険者の保険料の方が安価になるようです。

B子さんの場合、夫A男さんが65歳になったとき(年齢計算二関スル法律及び民法第147条2項により、誕生日の前日の3月24日に64歳満了となり「65歳に達した」となります。)に第3号被保険者(ベージュ)の資格を喪失します。

以下、順を追って説明します。まず、A男は65歳になると既に老齢年金を受給しているので、第2号被保険者(緑)の資格を喪失します(表の注2参照)。



第3号被保険者(ベージュ)の要件は、「第2号被保険者(緑)に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者」でした。上記のようにA男は既に老齢年金を受給しており、65歳になったので、第2号被保険者(緑)資格を喪失します。したがって、B子は「第2号被保険者(緑)に扶養されている」ことにはならず、かつ、無職なので(令和7年3月24日付で)第1号被保険者(黄色)に該当し、第3号被保険者(ベージュ)から第1号被保険者(黄色)への種別の変更の手続が必要となります。

要件該当の日(3月24日)の翌日から14日以内に、B子さんが居住する市(区)町村で、この手続を行います。スマホ・パソコンとマイナンバーカードで、マイナポータルを利用して電子申請ができます。A男さんの第2号被保険者(緑)の資格は、喪失した月の前月まで、すなわち2月までです。したがって、B子さんの第3号被保険者資格(黄色)も2月までなので、3月から第1号被保険者(黄色)となり令和7年3月分(月額16,520円)の国民年金保険料の払込(令和7年4月30日納付期限)が必要となります。以後、令和7年4月から1号被保険者の保険料(月額17,510円)の納付が必要です。 なお、国民年金保険料は毎月の自動口座振替もマイナポータルを利用してできますが、早期に手続しない場合、当初は、日本年金機構から送付される「国民年金保険料納付書」により納付することになります。また、上記で説明した本人が行う資格取得(種別の変更)届は、国民年金被保険者関係届書(申出書)については、スマホ・パソコンとマイナンバーカードで、マイナポータルを利用して電子申請ができます。

大切なのは、多少遅れても手続を怠らないことです

あとで、まとめて保険料を支払うことになったり、時効(年金受給権は5年、国民年金保険料の追納は2年で時効消滅)により年金額が減らないよう、しっかりと手続をしましょう。

以上、就職、退職等に伴う公的年金・健康保険制度の手続を網羅的に紹介しました。

当事務所では、老齢・障害・遺族年金等のセミナー講師も行っています。是非ご用命ください。

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